120号 日銀政策金利 0.5%へ  東京都心 不動産投資・賃貸市場への影響

日本銀行は昨年春に約8年続いたマイナス金利政策を解除し、約17年ぶりに利上げに踏み切りました。春に続き昨年夏には0.25%へ追加利上げをし、今年1月にはさらに0.5%へ引き上げる決定を下しました。政策金利が0.5%になるのも約17年ぶりとの事です。
この金利引き上げは、東京都心の不動産市場、特に賃貸市場にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

金利引き上げの背景と影響

日本銀行は、物価上昇率が安定しない中、長年にわたり超低金利・マイナス金利政策を維持してきましたが、「2%程度の物価目標の持続的・安定的な実現が見通せた」とし昨年金利の引き上げを実施しました。
現在、主要国の物価上昇率の指標は2%程度がスタンダードになっているようです。日銀が今年1月に公表した「経済・物価情勢の展望」でも「消費者物価(除、生鮮食品)は来年まで概ね2%台で推移すると予想される。予想物価上昇率も緩やかに上昇している。」とされていました。世界的なインフレの圧力や国内経済の回復基調が進む中で、日銀は金利を引き上げることによって物価の安定を目指し、金融引き締めに踏み切ったと考えられます。金利が引き上げられると、借り入れコストが増加し、企業や個人の投資行動は慎重になるのが一般的です。

不動産投資への影響

不動産投資ローンの金利は一般的に「短期プライムレート」を基準として半年毎に利率の見直しが行われているものが多いです。「短期プライムレート」は市中金利に連動しており、市中金利をコントロールしているのが日銀の政策金利ですので、政策金利が上がれば、ローン金利も連動して上がるのが一般的です。金利の上昇は借り入れを行っている投資家にとってはローンの返済額が増加し、キャッシュフローに大きな影響を与えることになります。特に東京都心の不動産は、投資家にとって魅力的なターゲットであり、これまでも安定的な収益を上げてきました。しかし、金利上昇により支出(ローン返済額)が増えるため利回りを確保するためには、投資する物件の価格水準を下がるか、賃料をあげて収支の改善を行える余地のある物件を見定めて投資する必要が出てきます。

賃貸市場への影響

東京都心の賃貸市場においては、金利引き上げが賃料に与える影響が注目されます。住宅を購入するための金利が上昇することで、購入を控える人々が増加し、賃貸需要が高まることで、賃料が上昇することが予想されます。
特に、この数年建築費・人件費の高騰による不動産価格の上昇も相まって1LDK以上の広めの部屋は特にこの傾向が強く「一口家主iAsset」・「コンシェリアJAsset」でも、更新や賃貸の入替時に大幅に賃料UPしている部屋が複数あります。
コロナ期にテレワーク等の影響で郊外の広めの部屋への賃貸需要が活発になり、弊社グループの管理物件における1Kタイプの入居率も多少の影響がありました。しかしコロナが収束した現在は、都心回帰の動きも見られ昨年(2024年)の平均入居率は99.3%となっておりコロナ前の水準に戻っております。今後も東京都心、特に山手線沿線・内側エリアでの新規供給は少なく、都心の高い利便性を求める層は依然として多いため、東京都心の相場賃料の上昇傾向が続くと考えています。


(※空室対象31日以上)

今後の展望

金利の引き上げにより物件購入に対するハードルが高くなることで、賃貸市場への需要が高まり、特に好立地の物件はますます需要が強くなると考えられます。また、金利の上昇は、現在のマンションを賃貸に出している所有者(オーナー)にとっても賃料改定を促す要因となり得るため、今後も賃料は上昇傾向を維持すると予想しています。
とはいえ、金利引き上げが長期的な影響を与えるのか、あるいは短期的な調整にとどまるのかは、経済全体の動向やインフレ率によって左右されるため、注意深く見守る必要があります。しかし、現状、東京都心の賃貸市場における需要は大きく、供給が少ないため今後も安定した投資ターゲットになると考えています。